「よいしょ」


怜美はそれを持ち上げて横へずらした。


板の奥に地下へと続くコンクリートの階段が出現する。


このベニヤ板はつい数年前に置かれたもので、固定されていないことはほとんどの生徒が知っていた。


怜美は地下へ続いている空間に首だけ突っ込んで確認をしてみた。


地下室は暗くてなにも見えない。


突っ込んだ首から先だけがヒヤリとした冷気に包まれて、慌てて首を引っ込めた。


それから少しだけ身震いをする。


雪から噂話を聞いてうずうずしてここまで来たものの、やっぱり地下室にひとりで入るのは勇気がいる。


怜美は階段の壁についている電気のスイッチへと手を伸ばした。


しかし、ギリギリのところで届かない。


階段を2段ほど下りないと届かない場所にあるのだ。


「なんで、階段の入り口につけておかないの!」


思わず声に出して文句を言うと、自分の声がコンクリートの壁に反響して戻ってくる。


その声にビックリして怜美は体を硬直させた。


「おばけなんてないさおばけなんて嘘さ」


恐怖心を吹き飛ばすように陽気な声で歌いだす。