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職員室の戸をノックして中に入ると、結局猫田さんも後ろからついてきた。


と言っても、猫田さんの姿は他の人には見えないから、不振がる先生もいない。


怜美は真っ直ぐ男性教師へと近づいて行った。


書類を見ていた先生は顔を上げて「福永さん、どうした?」と、質問してきた。


男性教師は服の上からでもわかるくらい筋肉質な体をしている。


陸上クラブの顧問をしている先生なのだ。


「あの、先生って何年前からこの学校で働いていますか?」


突然の質問だったが、生徒がこの手の質問をするのは宿題が関係していると判断してくれたようだ。


「先生は6年前から働いているよ」


丁寧な受け答えだったけれど、怜美は一瞬落胆してしまいそうになった。


でもまだ可能性はある。


「陸上クラブの中で、特に足が速かった生徒のこと、覚えていますか?」


「う~ん、そうだなぁ」


先生は腕組みをして考え込んだ。


「印象に残っている生徒は何人かいるけれど、それを調べているのか?」


「はい、そうなんです」