☆☆☆

この学校には開かずの扉がある。


そんな面白そうな話を聞いてジッとしていられる怜美ではなかった。


放課後のホームルームを終えると同時にランドセルを引っつかんで2組から飛び出した。


後方から担任の先生が「福永さん、廊下は走らない!」と、注意してきたが急には止まれない。


怜美はそのまま廊下を走り、階段を駆け下りて、昇降口を通り越していた。


そしてたどり着いたのは雪に教えてもらった体育館倉庫の前。


少し乱れた呼吸を整えて両開きの大きな戸に手をかける。


グッと体重をかけるとそれは低い音を鳴らしながらゆっくりと開いて行った。


中にはバスケやサッカーのボール。


跳び箱にマットレスに、平均台など体育の授業で使う道具がところ狭しと置かれている。


怜美はそれらをかき分けるようにして進んで行き、コンリートの壁の前で立ち止まった。


怜美が立っている目の前の壁だけ木製になっていて、それは扉一枚分の大きさだった。