ソファの上はキレイだったが、リビングの中にはゴミが散乱しているのだ。


新聞の切り抜きだったり、食べた後のカスだったり、ホコリも積もっていて掃除ができていないのがわかった。


それでもエミの母親は気にした様子を見せず、エミの前に座った。


「それで、エミのことを記事にするんだったわよね?」


「は、はい」


口の中に残っていたクッキーをゴクリと飲み込んで背筋を正す。


「エミはイジメられて死んだの」


途端に確信に触れることを言われて、怜美はたじろいだ。


母親の目は真剣そのものでイジメがあったと信じて疑わない様子だ。


でも、エミ本人がそうではないと言っている。


チラリとエミに視線を向けると、今にも泣き出してしまいそうな顔をしていた。


「これを見て」


差し出されたファイルを開いてみると、それは全国の小学校で起こっているイジメ自殺の記事をスクラップしたものだった。


だけどもちろん、この中にエミさんの記事はない。


「年間これだけの子がイジメに遭って自殺をしているの。エミだってきっとそうに違いない」


母親は指を組んで祈るような体制になって言った。