「猫田です。出てきて話を聞かせてもらえませんか?」


優しい声色に怜美は首をかしげた。


「捕まえて、扉の向こうに戻すんじゃないんですか?」


思わず質問をすると、苦笑いを浮かべた猫田さんが振り向いた。


「そんな無理強いはしませんよ。かくりよから出たということは、かくりよに不満があるか、この世に未練があるかのどちらかです。問題を解決しないことには、また同じようなことが起こるんですよ」


それもそうかと、納得した。


捕まえて連れ戻すだけじゃなかったんだ。


「花子さん、どうか僕にお話を聞かせてください。お力になれるかもしれませんから」


猫田さんの丁寧な説得により、ドアのカギが外される音が聞こえてきた。


ギィィと低い音を立てて一番奥のドアが開いていく。


中から出てきたのは灰色のスカートをはいて、白色のブラウスのを着た、おさげ髪の女の子だった。


怜美が思っていた花子さんとは全く違っていて、瞬きを繰り返す。


「あなたがこの学校の花子さんでしたか。ちょうど怜美さんと同じ年齢ですね」


どうしてわかるのだろうと思って近づいてみると、花子さんは胸元にネームをつけていた。


ちょうど今怜美がつけているのと同じようなものだ。


そこには5年1組楠エミ。


と、書かれている。


「聞かせてもらえますか? エミさんの気持ちを」


猫田さんに言われて、泣き顔のエミは話始めたのだった。