結局自分にはなにもできなかった。


あの家の中でどんな風に動物たちが飼われているのか、想像しただけで胸が痛む。


「僕の声は誰にも聞こえない。姿だって見えない。だからどうか、僕の変わりにあの子たちを助けてほしい」


少し離れた場所で猫田さんは怜美へ向けて頭を下げた。


「でも、助けるって言ってもどうすればいいか……」


動物の保護団体に連絡するとか?


だけど連絡先なんて知らない。


だとしたら、とにかく警察だろうか?


動物のことで警察官が動いてくれるんだろうか?


どうすればいいかわからず、怜美はその場で立ち尽くす。


猫田さんはずっと頭を下げてきているけれど、とてもひとりで対処できることではないと思う。


あの男性から逆恨みをされる可能性だって十分にある。


考え込んでいると、足音が聞こえてきて怜美は視線を上げた。


「あ、雪ちゃん!」


歩いてきたのは同じクラスの雪ちゃんだったのだ。


情報通で、いつもおもしろい話を怜美に聞かせてくれる。