もちろん、その姿は男性には見えていない。


「あなたがしていることは動物虐待です」


猫田さんが真っ直ぐに男性を見据えて言った。


「家の中に閉じ込められて自由もない。きっと散歩だってろくにしていないんでしょうね。犬と猫は仲良くできる者もいるけれど、さっき喧嘩している声が聞こえてきました。一緒に飼うならスペースを分ける必要があるんじゃないですか? 喧嘩をした結果病気や死ぬに繋がることもある」


猫田さんは相手に聞こえていないと知りつつ言葉をつむぐ。


それは猫田さんの心からの声だった。


もしかしたらこの家には猫田さんの子孫だっているかもしれないのだから。


怜美は必死になって猫田さんの言葉を代弁した。


「だ、だから、動物たちがかわいそうじゃないですか」


どうにか言葉を閉めたとき、怜美の息は切れていた。


男性が怜美のことを見下ろしている。


その目は鋭く、今にも襲い掛かられそうな気配すら感じた。


それでも怜美は逃げなかった。


家の中にいる動物たちのために、ジッと男性を睨みかえる。


しかし男性は「だからなに?」と一言言い残して、出かけていってしまったのだった。