それから10分ほど歩いたところに一軒目の家があった。


この辺ではとても大きなお屋敷で、改装をしながら150年くらいの歴史があるときいたことがある。


この町にもかなり貢献していて、怜美ももちろん知っている家だ。


「まさかここだったなんて」


怜美はそう言ったきり黙りこんでしまった。


屋敷の大きさに首が痛くなるほど見上げないといけない。


「あ、今猫の声が聞こえました!」


猫田さんが門へ身を乗り出して言う。


しかし、怜美にはなにも聞こえなかった。


「本当ですか? 私にはなにも――」


『聞こえませんでした』と言葉を続ける前に後方から「うちになにか用事?」と、声をかけられた。


振り向くと中学校の制服を着た男の子が立っている。


怜美は慌てて身をよける。


「あ、いえ、あの」


「怜美さん、この人に猫を飼っているかどうか質問してください」


猫田さんが怜美の腕を掴んで言う。


突然そんな質問をしたら変な人だと思われちゃう!


だけど質問しないとここまで来た意味がない。