さすが小学校だ。


どの住所もこの学校からそう離れていなことがわかって、怜美は大きく息を吐き出した。


これから今日中に全部の家を確認して回ることができそうだ。


しかし校門から出た猫田さんは浮かない表情をしていた。


やけに険しくて眉間にシワを寄せているのだ。


「猫田さん、どうしたんですか?」


心配になり、小さな声で質問をする。


周りからは怜美がひとりで話をしているように見えるから、文庫本を取り出して口
元まで持ってきて、隠した。


「いや、なんだか緊張しちゃまいまして」


猫田さんはそう言って大きく深呼吸をした。


兄弟姉妹はすでに亡くなっていても、血縁者と会うことができるかもしれないんだ。


それも100年ぶりに。


これで緊張しなかったらそっちのほうがおかしい。


「大丈夫です。私がついていますから」


怜美は背筋を伸ばしてそう言ったのだった。