ふたりぼっちの孤城

だがそれも今日で終わり。



(だからいい子で待っていてくださいね)


彼女を安心させるように笑顔を向けてから部屋を出た。






「それで、御当主様からの話とはなんですか?」


適当な部屋に入り座ると家庭教師はそわそわしながらこちらを見てくる。

もう少し落ち着けないものか。

あえてゆったりと間をとりながら1枚の紙を取り出した。


「こちらです」
「これはっ・・・」


その紙に書かれていたのは他家の家庭教師としとしての推薦状。しかも今よりも好条件の。

印刷された文字を指でなぞりながら家庭教師は目を輝かせ、頬を紅潮させた。


「貴方の仕事ぶりを見て是非とのことです。どうされますか?」
「是非とも!よろしくお願いします」
「ではこちらにサインを」
「はい・・・!」


一切疑うことなく家庭教師はサインを書き終えた。

馬鹿な奴だ。