ふたりぼっちの孤城

好戦的ではなく友好的にいこうと深呼吸をしてドアをノックした。


「失礼します」
「え、山吹?」


私がいることを確認すると彼女の表情が一瞬和らいだような気がした。


「何ですか貴方は。お嬢様に勉強を教えている間は誰も立ち入らないようにお願いしたはずですが?」


だが家庭教師の言葉を聞き彼女がビクッとした。


(大丈夫ですよ、お嬢様。今日私が助けますからね)


そんな彼女に労る様な目線を向けた後、家庭教師と向き合う。


「当然の訪問をお許しください。先程御当主様からの伝言を預かりましたので急いで参った次第です」
「当主様から・・・?」


"御当主様"という単語を出した瞬間、家庭教師の目が疑心から期待するものへと変わった。


「はい。ここでは何ですので、別室に来てはいただけませんか?」
「分かりました。ではお嬢様、先生が戻って来るまでにここまで問題を解いておいてくださいね。帰ってきたら確認させて頂きますからね」
「は、はい・・・」


あぁ可哀想なお嬢様。

家庭教師の言葉に怯えてしまっている。