ふたりぼっちの孤城

「では今週も追加で宿題を出しておきますね。もちろん出来ますよね?」
「は、はい・・・」
「それと、これは当たり前の事ですが宿題を他の方に手伝ってもらってはいけませんよ。告げ口するのもなしです。これは全部貴女の将来のために言っているんですよ」
「分かってます・・・」


彼女はこれに耐えていたのか。

姉と比べられ、父に報告すると脅され、出来なければ宿題を増やされる。

悪循環だ。

そして彼女の為だと言いながら彼女の逃げ道を無くそうとしている。

爪痕が残るぐらい手を握りしめていた。

腹が立つ。

家庭教師に対する怒り以上に、自分に腹が立つ。

彼女が嫌な思いをしていたことに気づけなかった自分に。

彼女が辛いときに真っ先に助けを求められる存在ではなかった自分に。

衝動に任せて部屋に飛び込む前に、ふらふらと自室に戻った。

握りしめていた手には爪の形がくっきりと残り、内出血していた。





次の家庭教師が来る日、私は再び彼女の部屋の前に立った。

彼女は前回と同様俯いており、家庭教師は何やら無駄なことをぺちゃくちゃ話している。