ふたりぼっちの孤城

次に見るのはやめてただ耳をすませることにした。


「あの、ここらへんがよくわからないんですが・・・」


彼女の口から滅多に聞くことの無い敬語が聞こえた。

これはこれでしおらしくて可愛い。


「そこですか。前も引っかかってましたよね?きちんと復習したんですか?」


(は?)


「ご、ごめんなさい・・・」
「あぁ、別に責めているわけじゃありませんよ?ただ貴女のお姉様はこれぐらい軽々とやってのけていたので、その差に驚いただけです」


ふざけるなと思った。

もっと他に言い方があるだろう。

家庭教師の口から出る言葉はどれも彼女を突き刺している。

彼女はグッと耐え下を向いた。膝の上の手は震えている。

今すぐにでも駆け寄り慰めたかったが、ここは我慢だ。

今私が飛び込んだところで、家庭教師を追放することは出来ない。


「あまり酷いようでしたら貴女のお父様に報告させていただきますからね」
「それだけは、やめて下さい・・・」


彼女の声はどんどん小さくなっていく。