ふたりぼっちの孤城

「そんなに量がありましたっけ?」
「ううん。家てい教しの方」
「あぁ、そちらもあるんですね」
「そう。すっごくりょうがおおいのよ!イヤになるわ!」


プクーっと膨らませた頬が食べたくなるほど可愛い。

冗談半分で頬をぷにっと押すと萎んでいった。

そして頭を撫でながら宥める。



「最近忙しそうですもんね。家庭教師の方に量を減らして貰えるように頼みましょうか?」
「いい。おねえさまもこれだけやっていたらしいの。だからわたしもガンバる」
「ご立派ですね」
「でしょ!」


ふふんと自慢げに鼻を鳴らした彼女もとても可愛い。

彼女が幸せならそれでいい。

だから一切の不安が何も残らないように、念の為様子を探ることにした。





彼女は毎週火、木曜日に家庭教師に勉強を教えてもらっている。

普段その時間に渡しは夕食の支度をするのだが、今日は早めに済ませ少し開いたドアから部屋の様子を覗いた。

ドアは元々開いているので、バレないように息を潜めていれば問題ない。

何故ドアが開いているかと言うと、いくら年齢が離れているとはいえ、未婚の令嬢が異性と2人きりになることははばかられるからだ。
私は彼女の専属侍従だから別だが。

彼女と家庭教師は勉強机に並んで座っているだけで特に変わった様子はない。