ふたりぼっちの孤城

それどころか屋敷全体が当主に気にいられようと元愛人親子に媚びへつらっている気さえする。

現にまだまだ世話のかかる年齢にも関わらず、お嬢様の専属侍従は私1人しかいない。

姉には婚約者という逃げ道があった。

でもこの方には、そんな存在がいない。

もしかしたらこの方は、齢6歳にして孤独だったのではないだろうか。

まだ1人で寝るのが怖いというのに。


「大丈夫ですよ、椿お嬢様。貴方の幸せは私がお守りします」


堰を切ったように泣きじゃくった彼女は、最後に「ありがと」と言って眠りに落ちた。

このとき私は彼女に絶対の忠誠を誓った。

全てを投げ打ってでも彼女のそばにいたいと思った。

私は彼女を幸せにするためだけに存在する。

その事実が何よりも私を幸福にした。

彼女の幸せのためにまずは身辺整理をしよう。

彼女に忠誠を誓わない使用人なんて要らない。

それで私しか残らなくても、彼女はきっと笑って許してくれる。

だって彼女には今、私しかいないのだから。