部屋の鍵が開く音がした。

そしてわたしを起こす為に肩を揺すられた。


「やめて!!」


その手を払いのけ視線を向けると、知らない人がいた。

理沙じゃない。

性別すらあっていなかった。


「もっ、申し訳ありません。椿お嬢様」


彼はオドオドしながら頭を下げた。

その所作から侍従としてまだまだ未熟だということが分かる。


「貴方は誰?名乗りなさい」
「申し遅れました。本日のお嬢様のお世話を任されました、藤啓一(ふじけいいち)です」


ズレたメガネを直しながら名乗った藤は、山吹には到底劣るが、顔が良い部類に入る。


「そう、見ない顔ね。最近雇われたの?」
「はい。まだ専属は決まっておりません」
「へぇそれで?理沙はどうしたの?」


わたしが目を細めるとビクッと反応され、目を逸らされた。

肝が据わっていないらしい。


「理沙さんは外せない仕事があるそうなので、代わりに僕が配属されました」
「・・・随分舐められているのね」


この場合舐められたのはわたしと山吹、どちらだろうか。