「どっちよ!」
「どっちなら嬉しいですか?」


反射的に言い返すと、お返しに艶っぽい笑みを向けられた。

その色香に当てられて顔に熱が溜まる。


「いっ、言わないわ!それよりも肩を揉んでちょうだい。疲れたの!」
「はい。仰せのままに」


こんな感じでいつも負けてしまう。


(だって仕方ないじゃない!山吹の顔が特別いいんだもの!!)


でも今日こそ勝ちたいと思った。


「・・・ねぇ、山吹」
「はい」


わたしの肩を揉むために髪をひとつに結い始めた山吹に、鏡越しに話しかけた。


「さっきの話だけど」


そう切り出すと山吹の手がピタリと止まった。

この反応を見る限り、やはりあの提案は本気だったのだろう。

そんな期待半分の予想を抱きながら後ろを振り返った。

嬉しいか嬉しくないかなんて、答えは決まりきっている。


「貴方が連れ出してくれるって言うなら、喜んでついていくわ」


ふっと目を細めて笑うと、山吹は目を見開き本当に静止してしまった。

心做しか耳が赤い気がする。


(ふふ、勝ったわ)