ふたりぼっちの孤城

山吹が具体的に何をしたのかは知らない。

知ったところでわたしには真似出来るようなことではないので聞くつもりもない。

問題になって山吹の不利益にならなければそれでいい。

それぐらい信用していた。


「本当にお疲れ様です。ご立派でした」


山吹はわたしの傍に来て、労うようにわたしの頭を撫でる。

いつもならここで安心したはずだ。

でも今回はそうじゃない。

わたしのお見合い問題は今日は何もなくて良かったで済まされる問題ではない。

いずれ次がやってくる。

きっと今回よりも、更に用意周到でやってくる。

こんなの、ただの現実逃避と変わらないのではないか。


「・・・・・わたしももう少ししたら成人よ。いつまでも逃げることは出来ないわ。今回はお見合いだったからまだ良かったけれど、正式に婚約者として連れてこられたら対処の仕様がないわ」


だから、素直に喜べない。

山吹はわたしの頭を撫でるのを辞めた。

仕方のないことだ、とわたしの懸念を肯定されるかもしれない。