ふたりぼっちの孤城

柾さんがわたしとの婚約を進める可能性は一気に下がった。

次は菖蒲さんをどう葬ろうかと思うと、皐さんが会話に加わった。


「何だかんだ仲がいいんだね?嫉妬してしまいそうだよ」
「それはどちらに対して、ですか?」
「もちろん菖蒲君に対してだよ」
「お上手ね」


今のところ皐さんにとってわたしは他家の情報をベラベラと喋る都合のいいカモだろう。

この人と婚約したら利用するために飼い慣らされて捨てられるのがオチだ。

だから牽制しておく。


「ところで、彼女さんとは順調かしら?」
「何の話か分からないな」


表情は崩さなかったが、カップを持つ手が僅かに震えている。

この情報も本当。

彼は同じ学園に通うご令嬢と恋仲だそうだ。

誰にも言えない秘密の恋。

さぞ背徳感があっただろう。

だが山吹には筒抜けだった。


「恥ずかしがっているの?案外初心なのね」


余裕そうに笑みに浮かべると、菖蒲さんがニヤリとわたしを見た。


「それを言うなら君だって僕が近づいただけで動揺していたじゃないか」
「あれを人はセクハラと呼ぶのよ?」


すかさず言い返すと笑顔が固まった。

イラッといたのが目に見えて分かる。

このままここにいたら面倒くさそうだ。