ふたりぼっちの孤城






既に理人が整理整頓を終えていたので、有栖川邸を出ていく準備はサクサクと進んだ。

そして迎えた引っ越しの日。

今日は平日だけど学校を休んだ。学校よりも引っ越しの方が何倍も大切だし、父と杏に会わなくて済む。

業者さんのトラックに荷物を積み込んでもらい、後はわたしと理人がここを出ていくだけとなった。

このまま誰にも会うことなく終わると思った。

だって今日は平日だ。会社だって学校だってある。

それなのに─────


「椿!」
「お姉様・・・?」


現在次期当主として教育を受けているお姉様が、玄関でわたしを待っていた。

多忙なためわたしとは1年近くは会っていなかったのに、何故今日に限ってここにいるのだろう。

お姉様はわたしのそばまでやってきて、そのままわたしの手を握った。


「お父様から聞いたわ。ここを出ていくって本当なの?」
「えぇ本当よ」