ふたりぼっちの孤城

「2年前の社交パーティーで知り合いました。ちょうどその頃から篠原家の跡継ぎ問題がより活発に囁かれるようになっていましたので、偶然を装い声をかけたのです。それから何度かお話しする中で私の情報力や社交力が目に止まったらしく、あちらから養子にならないかと声をかけていただきました」
「なるほど･･･」


山吹の能力なら声をかけられてもおかしくない。

山吹は中卒ではあるが高等学校卒業程度認定試験(いわゆる高認)に合格しているし、経営や経済についても熟知している。

三大財閥が持っているものと同等の情報を持っていることだって並大抵の使用人ではありえないことだ。

親の欲目ならぬ主人の欲目だけど、充分財閥のトップとしてやっていけるだけの素質をもっている。

あと2年も前から計画していたことにも驚いた。

あの頃から既にわたしとここから逃げるつもりだったのか。


「前に休みをとるときに『将来の準備をする』って言ってたでしょ？もしかしてその時も篠原夫妻に会いに行ったの？」
「ご名答です。養子になる下準備をしてまいりました」
「じゃあさっきお父様より篠原様の方が立場が上に見えたけど、ついでに弱みでも握ったの？」


いくら篠原夫妻が威厳を兼ね備えていたとしても、父の方が立場が上ならば無理を通せたはずだ。