ふたりぼっちの孤城

いや、だとしても信頼の寄せ方がおかしい。

今後のためにも、この際はっきり言っておかないと。

そう意気込み山吹と向き合うと、山吹は何やら嬉しそうにわたしを見つめていた。


「な、何?」
「・・・これが俗に言う壁ドンってやつですか。悪くないですね」
「なっ」


確かに山吹を壁においやってはいたがそんなつもりはなかった。

でも身体がくっつきそうなくらい近くにいたことに気づくと、急に恥ずかしくなって思わず距離をとった。


「一から説明するのでひとまず座ってください。紅茶でも淹れましょう」


これの前に山吹が「あと少しだったのに」と言っていたのをわたしは聞き逃さなかった。

何があと少しだったのだろう。

寝る前にそれが"あと少しでわたしの胸が当たりそうだった"という意味だと気づき、顔から火が出るかと思ったのはまた別の話だ。




わたしの前に紅茶を置いたところで山吹の方から口を開いた。


「まず何から知りたいですか?」
「そうね。・・・篠原夫妻とはいつ知り合ったの?」