ふたりぼっちの孤城

わたしの婚約を阻止するために色々手を回して父の邪魔をしてきたものの、その能力を買っていたから山吹は無事でいられたのだ。

それかわたしを自分の都合のいい人と婚約させることをまだ諦めていないのかのどちらかだ。

この婚約は父にとっては望まないものだったのだろう。

現に父よりも篠原夫妻の方が立場が上に見える。

この期に及んで父の諦めの悪さがとても醜く映った。

自分は外聞を無視して強引に継母と結婚したくせに、なぜわたしの婚約は自由にさせてもらえないのだろう。

それが子どもの義務とでもいうつもりか。


(1度だってわたしのことを思って行動したことなんかないくせに･･･)


その身勝手さに腹が立つ。


「ご自身はお母様が亡くなられて直ぐに再婚されたというのに、わたしには我慢しろと言うんですか？」


気づけば口に出していた。

やらかした。

でも今この場で父を焚きつけることができるのはわたしだけだ。

篠原夫妻がしても山吹がしても角が立つから。

わたしの予想通り父がわたしをにらみつけた。


「お前如きがそのような口を聞くな」


吐き捨てるように言われた。