ふたりぼっちの孤城

哺乳類は一生の心拍数が一定だと聞いたことがある。

だとしたら昨日からわたしは寿命を縮め続けているし、これからもきっとそうだ。

それでも抗うことが出来ない。


(・・・・・だって、山吹が好きだから)


ああ自分で思っておきながら恥ずかしい。

それを悟られないようにぎゅっと抱き締め返した。


「椿が積極的で私も嬉しいです」
「!!!」


その言い方には語弊がある。

わたしはただ照れ隠しでこうしているだけだ。

でも山吹があまりにも嬉しそうに言うから否定できなくなった。

なんだか上手く乗せられている気がして悔しい。

それに山吹は昨日わたしが許可して以来ずっと椿と呼んでくれる。

その度に遊園地でデートしたときのことを思い出してむず痒い気持ちになる。

もしかして山吹はわたしにもデートのときのように接して欲しいのだろうか。

例えば名前で呼んで欲しい、とか。


(それくらいなら出来るわよね。前もちゃんと呼べたもの)


「り、りひ・・・り」
「?」


いざ口にしようとすると急に気恥ずかしくなった。