過去に出会ったであろう女性に、私の触れられたくない黒歴史を口にされた。

苦しい言い訳をしたが、彼女の私への信頼がグラグラしているのが見て取れた。

わざわざ彼女に私の過去を話した女性にも腹が立つが、それより軽率な事をしでかした私に腹が立つ。

この世で唯一大切な彼女が汚された気分だ。

彼女の1番近くにいるこの私の手によって。

それでも一縷の望みをかけて誤魔化そうとしたが、10年近く共に過ごした彼女に通用するはずがなかった。

「触らないで」とこっちを見もせず手をはたかれて、拒絶された。

私がいつも通りに接したからといって彼女もそうするとは思っていなかった。

いなかったが、手すらとってもらえなかったことが私を絶望へと連れていく。

今ここに彼女がいなければそのまま倒れていただろう。


「今、山吹と話したくない」


これは死刑宣告と何ら変わりなかった。


「お嬢様お待ちください!」


みっともなく縋りついても彼女は私の方を見てくれない。


「どうか私の話を聞いてください!」