感情をぐしゃぐしゃにされて混乱して荒れても尚、わたしの根幹にあったのは山吹への気持ちだった。

疲れきったわたしはそのまま眠りについていた。

ふと目が覚めたのは午前3時。

あまりを見回しても誰もおらず殺風景だった。妙に冷たく感じる。

耳を澄ませばコツ、コツとドアを静かにノックする音が聞こえた。


(山吹・・・?)


あれからもう何時間も経っている。その間ずっと山吹はそこにいたのだ。

以前の山吹ならわたしが1人にしてと言えば去っていたはずだ。

現にわたしが初めて拒絶した時もそうだった。

それなのに今回、山吹はわたしの部屋の前から動かなかった。

何が山吹を変えたのだろうか。

わたしはそれも知らない。

気配を消してドアの前に近づくと、山吹の声も聞こえた。

うわ言のようにわたしの名前を呼び、許しを乞うている。

ごめんなさい、捨てないでください、と。

その時点で何か悪いことをしたと自覚があると白状しているようなものだ。