「お願い、だから、も、戻ってきて・・・」
山吹はわたしの涙をハンカチで拭ってくれる。
「また貴方のお傍に置いてくださるのですか?」
こくんと頷くと山吹が優しく抱き締めてくれた。
「山吹、あのね」
「はい」
「わたし、頑張ったの。頑張ったのよ。頑張ったんだけど、勉強、出来なくて、再テスト受けないといけなくなって、もう、1人じゃ無理で、ごめんなさい。貴方には、わたしより相応しい人がいるのに、貴方の、邪魔、したくなかったのに、わたしが言い出したことなのに、ずっと、迷惑かけてごめんなさい」
言ってることが滅茶苦茶だ。
それでも山吹はわたしの話を静かに聞いてくれた。
「貴方に迷惑をかけられたことなんて一度もありません」
その声に安心して、抱きつく力が強まった。
「知ってますか、お嬢様。私は仕える主人を自分で決める力を持っているんです。ですから御当主に仕えようと思えば仕えることが出来ますし、この屋敷から出ていっても職に困りません」
やっぱり山吹は凄いんだ。



