ふたりぼっちの孤城

山吹には幸せになって欲しいのに。


(でも、貴方は昔、わたしが望む限り傍にいてくれるって言ったでしょう?)


その言葉を信じたかった。

これはわたしのただの願望だ。

でもそれがわたしをつき動かしている。

お守りとしてルミを連れてきたし、片手にはぐしゃぐしゃになった赤点のテストを持っている。ルミは山吹が唯一残してくれた物で、山吹がいない間心の支えになってくれた。

頭は危険信号を発している。

もう引き返せなくなると。

それに対し、そうなってしまえと背中を押すわたしがいる。

衝動に駆られ、気づけば山吹の部屋の扉をノックしていた。


「はい、こんな夜更けにどちら様です・・・か・・・って、え、お、お嬢様!?」
「山吹」


山吹の声を聞くだけで泣きそうになった。手放せなくなった。

無意識に手を伸ばし山吹のシャツの裾を引いていた。

山吹もどこか泣きそうな顔をした。

わたし達はきっともう限界だったのだろう。


「山吹・・・ごめっ・・・・・な、さい」


涙が堪えきれなくなった。