山吹が帰ってきてから一週間以上経っても歯に物が挟まったように何かが残っていた。

首の骨が鳴りそうで鳴らなったり、ささくれが切れない長さのくせにビロビロ動いたりするのと同じくらいには気になる。

山吹の口から柊の件が誤解だと聞けたし、後始末だってきちんと任せたのだからもう不安なんてないはずだ。


(じゃあこのモヤモヤは何・・・?)


下校中に車窓から通行人を眺めていると、恋人繋ぎをしている男女が仲良く歩いているのが見えた。


(あぁ、デートね)


反射的にそう思った。

わたしは産まれてこの方デートをしたことが無い。

山吹以外とまともに会話する機会がなかったのだから当然だ。

そのせいかわたしの中で、男女2人で出掛ける=デート=親密な仲(両思い)という方程式が完成していた。

これは山吹と柊が2人で出掛けてたと聞いて酷く取り乱したことに通ずる。

たった1つの出来事で普段では有り得ない思考回路になり、危うく山吹との信頼関係を壊しかけたのはあれで2回目だ。

1回目で反省したはずだったのに情けない。

でもそれだけわたしを揺さぶるものだった。


(あぁ、デートか)


腑に落ちた。