ふたりぼっちの孤城

「柊はわたしの好物だからって朝食にオムレツを作ってくれたの。山吹から聞いたと言っていたわ。そんな他愛のない話をするぐらいに仲がいいのね」


山吹が息を飲む音がした。

動揺している。

山吹が何か言う前にわたしは言葉を繋げた。


「それからおやつのアップルパイを一緒に食べたの。その時柊が言っていたのだけれど、2人きりで買い物に言ったそうね。たまたまタイミングが被ったからって。山吹がそんなミスをするなんて珍しいわね」


どんどん嫌味みたいになっていく。

いくら理沙に強気に出たと言っても、わたしの中で完全に消化出来ていなかったのだ。


「買い物中に手を握ってくれたとも言っていたわ。柊は山吹のことが好きなの、貴方だって気づいているでしょう?それなのになんでそんなことしたの。柊の気持ちに応えるつもり?わたしに一緒に逃げるかって言ったのに?」


捲し立てたせいか息が切れた。

そのまま山吹の言葉を待つ。


「私は柊のことが好きだったことは1度もありません。それどころかたった今、嫌いになりました」


山吹がよどみなくそう言い切った。

その言葉が衝撃的で、わたしは目を見開いた。