ふたりぼっちの孤城

昨日お母様のことを思い出したから余計に。


「今日は、どこにも行かないのよね?」
「勿論です。だから大丈夫ですよ。ご安心ください」


わたしの不安が伝わったのか、山吹はそっとわたしの手を包み込んでくれた。

山吹の体温が伝わってきて、ホッとする。

ちゃんと山吹は帰ってきたんだ。

それから山吹はわたしの頭をサラッと撫でてから部屋を出ていった。

引き止めた時の不安はすっかり消えていた。

わたしと山吹の日常がまた始まった。





山吹は一日中ずっとわたしのそばにいてくれた。

帰ってきて早々わたしを寝かしつけて疲れただろうし、「少しは休んだら?」と言ったら「休んでますよ、今」と返され何も言えなくなった。

もしかしてわたしの世話に手を抜いているのかと思ったけれど、山吹の仕事ぶりは相変わらずだった。

じゃあどういう意味なんだろうか。

気になるけれど、それよりも言わなければならないことがある。

山吹のいない4日間の出来事だ。

そしてもしわたしがやらかしていたのなら早急に対処してもらわないと、父に何されるか分からない。