(なんか、暖か・・・)


人の暖かみと重さを感じ目を開けると、山吹がわたしに微笑んでいた。

暖かみの正体は山吹の体温で、重さの正体はわたしを抱きしめている山吹の腕だと理解した途端、思わず突き飛ばした。

いや、正確にはわたしが山吹を押しながら後ずさった。


「なな、な、な、何で、山吹が!?」
「起きられましたか、お嬢様。おはようございます」
「おはよう・・・ってそれよりも、何で山吹がわたしのベッドで寝ているのよ!?」
「覚えていらっしゃらないんですか?昨夜私の胸に飛び込んでこられたのに・・・」


恥じらう乙女のように言われても困る。何かと語弊がある言い回しも辞めて欲しい。

それに恥ずかしがるのはわたしの方だ。

いくら雷を怖がっていたとしても、この歳で抱きつくのは恥ずかしい。


「あ、あれは不可抗力よ!わたしが雷無理なの知っているでしょう!」
「それなら私のだって不可抗力ですよ。ほら見てくださいこのシャツ。ここだけ異様にシワがよっていますよね?何故だと思います?」


山吹が指したところにはくっきりとシワが出来ていて、昨日の様子を思い出すのには充分だった。


「・・・わたしが掴んでいたから?」
「はい。お見事大正解です」


あの時のわたしは雷への恐怖とお母様が他界したことを思い出したことで混乱していた。