「何これ…」
放課後、私はモバイルバッテリーに繋がれているスマホ画面を見つめながら呟いた。



もう30分もケーブルに繋いだままだったからかスマホは熱を帯びていた。



でも、そんな事を気にしていられるほど私は落ち着いてはいなかった。



「ん〜?騎恋どした?」



私が深刻そうな顔をしてスマホを見つめていると、不審に思ったのか親友の鈴奈が心配そうな顔をして近づいてきた。



「いや…迷惑メールがラインに来てて」



そう言うと鈴奈がふっと表情を和げ、



「なーんだ、もっと重大な話かと思ったぁ」



とつまらないとでも言いたげな表情を浮かべた。



私はその顔に何故だか少しの不満を覚え、



「何よ、これでも結構危ないんだからね?ほら、電話番号とか載ってて」 



と被害者ぶるような言い方をしてからスマホ画面を鈴奈に向けた。



「あ、ほんとだ。絶対かけちゃダメだよ?」



「もー、わかってるって!それにしてもさ、何気にこれ、割とリアルじゃない?」



「そ?私は4とか殺すとか、不吉な言葉ばっかり使っててデマにしか見えないんだけど」



「うーん、まぁ…?それは確かに…」



そんなこんなで鈴奈との話を続けていると、差出人をまだ確かめていないことに気がついた。



それに気づくとすぐに、一度戻るボタンをタップしてから差出人のアイコンのニックネームを見た。



「"ここ"…?」



差出人のアイコンにはひらがなで"ここ"と書いてあるだけだった。



当然"ここ"に心当たりはなかった。



「この…"ここ"?とはさ、知り合いなの?」



突然、鈴奈が今まさに考えていたことを口にしたので少し驚いたが、すぐに冷静になる。



「ううん、全然知らない人。突然ラインが来てて…。」



「えー、それは怖いわ。」



2人で1つのスマホをしばらく見つめていると、いきなり通知音がきて2人して飛び上がってしまった。


でもそれは、母からのメッセージだった。


「なんだ…"ここ"からのかと思ったじゃん…」



鈴奈が残念そうに言う。