翌朝。
紫月さんは湯河原の旅館に行く前に、俺を横浜の中華街に連れて行ってくれた。旅館のチェックインが十七時だから、十五時半くらいまでは、中華街をぶらついて大丈夫なのだそうだ。
助手席のドアを開けて、俺は車から降りた。
「俺、中華街なんて初めてきました」
「だろうな。だから連れてきた」
紫月さんが運転手席のドアを開ける。紫月さんは運転手席の飲み物入れのとこにあった煙草の箱と携帯灰皿を持って、車から降りた。
「蓮夜、これ持ってて」
紫月さんが俺に煙草と灰皿を渡してくる。俺は「はい」と頷いて、指が折れてない方の手でそれを掴んだ。
俺を見て少しだけ微笑むと、紫月さんは首にかけているストラップをいじって、車の鍵を閉めた。駐車場の入り口のそばにある精算機のところへ行って、紫月さんはそれのボタンを押した。
辺りを見回す。
駐車場の前には、見慣れない景色が広がっていた。横断歩道の先に、中華街と書かれた大きな門がある。門は全体的に青くて、文字だけが金色に輝いていた。門とはいっても、別に引き戸があるわけではない。例えるなら、そう。浅草の雷門の提灯をとって、造形をかなり細くした感じとでも言えばいいのだろうか。
紫月さんが触るのをやめると、精算機のどこかから、まるで人が口から舌を出したみたいに、紙が出てきた。駐車券だ。
紫月さんは駐車券をとると、肩にかけていた鞄から財布を取り出して、その中に入れた。ポケットに財布をしまうと、やっと紫月さんは俺の隣にきた。
紫月さんに煙草の箱を渡してから、俺は口を開く。
「吸うんですか?」
「そ。一本だけな」
紫月さんは箱から煙草一本を手に取って、口に咥えてから、煙草の箱を雑に、鞄の中に入れた。
「蓮夜、離れてろ」
「わかりました」
俺が離れたとろで、紫月さんはパーカーのポケットからライターを取り出して、煙草を吸い始めた。
紫月さんは俺がそばにいるようになってから、全く煙草を吸っていなかった。初めて紫月さんの車に乗った時、車のあらゆるところから煙草の匂いがした。それに車にある灰皿にも、家のベランダにある灰皿にも吸い殻も溜まっていたから、紫月さんは多分ヘビースモーカーなのだと思う。それなのに紫月さんは、俺がそばにいることになった途端、一切煙草を吸わなくなった。煙草を吸っているのを見たのは紫月さんとファミレスに行った時以来だ。あの時は、紫月さんは禁煙席で一緒にご飯を食べてくれて、会計の前に少しだけ、外に煙草を吸いに行ったんだよな。
ヘビースモーカーの紫月さんが俺のためだけに煙草を吸うのをやめてくれたのだから、せめて外では思う存分吸って欲しいなと俺は思う。煙草は体に良くないものだから、やめられるなら、しっかり禁煙して欲しいとも思うけど。
「ああ。じゃ、そろそろ行くか」
煙草を吸い終わった紫月さんが、俺の隣に来る。俺は声を上げて頷いて、中華街の方に足を進めた。
紫月さんは湯河原の旅館に行く前に、俺を横浜の中華街に連れて行ってくれた。旅館のチェックインが十七時だから、十五時半くらいまでは、中華街をぶらついて大丈夫なのだそうだ。
助手席のドアを開けて、俺は車から降りた。
「俺、中華街なんて初めてきました」
「だろうな。だから連れてきた」
紫月さんが運転手席のドアを開ける。紫月さんは運転手席の飲み物入れのとこにあった煙草の箱と携帯灰皿を持って、車から降りた。
「蓮夜、これ持ってて」
紫月さんが俺に煙草と灰皿を渡してくる。俺は「はい」と頷いて、指が折れてない方の手でそれを掴んだ。
俺を見て少しだけ微笑むと、紫月さんは首にかけているストラップをいじって、車の鍵を閉めた。駐車場の入り口のそばにある精算機のところへ行って、紫月さんはそれのボタンを押した。
辺りを見回す。
駐車場の前には、見慣れない景色が広がっていた。横断歩道の先に、中華街と書かれた大きな門がある。門は全体的に青くて、文字だけが金色に輝いていた。門とはいっても、別に引き戸があるわけではない。例えるなら、そう。浅草の雷門の提灯をとって、造形をかなり細くした感じとでも言えばいいのだろうか。
紫月さんが触るのをやめると、精算機のどこかから、まるで人が口から舌を出したみたいに、紙が出てきた。駐車券だ。
紫月さんは駐車券をとると、肩にかけていた鞄から財布を取り出して、その中に入れた。ポケットに財布をしまうと、やっと紫月さんは俺の隣にきた。
紫月さんに煙草の箱を渡してから、俺は口を開く。
「吸うんですか?」
「そ。一本だけな」
紫月さんは箱から煙草一本を手に取って、口に咥えてから、煙草の箱を雑に、鞄の中に入れた。
「蓮夜、離れてろ」
「わかりました」
俺が離れたとろで、紫月さんはパーカーのポケットからライターを取り出して、煙草を吸い始めた。
紫月さんは俺がそばにいるようになってから、全く煙草を吸っていなかった。初めて紫月さんの車に乗った時、車のあらゆるところから煙草の匂いがした。それに車にある灰皿にも、家のベランダにある灰皿にも吸い殻も溜まっていたから、紫月さんは多分ヘビースモーカーなのだと思う。それなのに紫月さんは、俺がそばにいることになった途端、一切煙草を吸わなくなった。煙草を吸っているのを見たのは紫月さんとファミレスに行った時以来だ。あの時は、紫月さんは禁煙席で一緒にご飯を食べてくれて、会計の前に少しだけ、外に煙草を吸いに行ったんだよな。
ヘビースモーカーの紫月さんが俺のためだけに煙草を吸うのをやめてくれたのだから、せめて外では思う存分吸って欲しいなと俺は思う。煙草は体に良くないものだから、やめられるなら、しっかり禁煙して欲しいとも思うけど。
「ああ。じゃ、そろそろ行くか」
煙草を吸い終わった紫月さんが、俺の隣に来る。俺は声を上げて頷いて、中華街の方に足を進めた。



