紫月さんは家につくと、すぐに昼食を作ってくれた。昼食はやっぱりオムライスだった。

 俺は紫月さんが作ってくれたオムライスを見て、やっともう昼の三時なのに、まだ昼食を食べていないことを思い出した。紫月さんに自分の気持ちをぶちまけてしまったり、泣いてしまったりしたこともあって、すっかり昼食のことを忘れていた。

 椅子に座って、ダイニングテーブルの上にあるオムライスをスプーンでかき込む。昨日クローゼットに閉じ込められてから、ヨーグルトくらいしか食べてなかったから、ついものすごい勢いで食べてしまった。多分、食べ切るのに五分もかかっていない。

 台所にいる紫月さんが、空になった皿と、俺を交互に見て、呆れたようにため息を吐く。
「どんだけ食べるの早いんだよ。俺のまだできてないんだけど」
 ガスコンロの上にあるフライパンを一瞥してから、紫月さんは笑う。フライパンの中には、ケチャップチャーハンが入っていた。

 ああ、しまった。今日はまだ、紫月さんと二人で食事をしていないのに、俺が先に食べ終わってしまった。思わず口を開けて、額から汗を流す。やってしまった。朝食は一緒に食べられなかったから、昼食はどうしても一緒に食べたかったのに。

「アハハ、そんなあからさまに落ち込むなよ。少なくとも一週間は、いつでも一緒に飯を食えるんだから」
 口をヘの字に曲げて皿を見つめている俺を見て、紫月さんは声を上げて笑った。
 確かにそうだ!旅行をするなら、いつでも一緒にご飯を食べられる!
「やった!! 俺、誰かと一緒にまともな食事するのなんてすごく久しぶりなので、めっちゃ嬉しいです!」
「そうか。俺もお前と食事が出来て嬉しいよ、蓮夜」
 そう言って、紫月さんは陽気に笑った。

 紫月さんが旅行の支度を終えた時にはすっかり夜になっていた。俺と紫月さんは夕飯を食べて風呂に入ったら、すぐに歯を磨いて寝た。