僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい



「あいつって……鈴香さんのことですか?」
「ああ。はあ……。一体どんな家で育ったら、あんな言葉が言えるようになるんだろうな」
 力一杯箒を握りしめて、紫月さんは言う。
 力を込めすぎたのか、木製の箒はミシッと音を立てた。
 その音はまるで俺と紫月さんの心のヒビを現しているかのようで、聞いていて痛々しいったらありゃしなかった。

『だとしても親なら虐待は辞めさせないと。それが親の務めです』
 鈴香さんの言葉が繰り返し頭をよぎって、俺の虐待の傷を化膿させる。


「紫月さん……?」
 紫月さんは何も言わず、俺の頬を触った。
「そう落ち込むな。きっと蓮の姉は俺の親みたいな奴じゃないから。そのうちわかり合える」
「……そうですかね」

 ねえ紫月さん、気づいてます?
 そんなことを言っている時点で、紫月さんは親を本心でクソ親だなんて思えてないことに。
 本当に親が嫌いなら、今のところで、酷いとかクソとか言うんじゃないか。だって紫月さんは俺の姉を、クソ姉だって言ったんだから。
 身内にだけはそんな暴言を吐けないなんてことはないハズだ。でも俺はそのことに気付づいていないふりをした。指摘したら、紫月さんを傷つけてしまうと思ったから。


「ああ、そうだよ。俺が保証する」
 紫月さんが俺の頭をポンポンする。
「……やっぱお前の姉はクソだな」
 紫月さんが俺の頭部を見ながらそう愚痴を零す。スタンガンで撃たれた時に、頭から道路に突っ込んだから、痣ができていたのかもしれない。

 姉ちゃんには暴言吐くのに親には暴言を吐かないなんて、やっぱり紫月さんはどこかで親を大切に想っているのかもしれない。

 親のせいで弟さんが植物状態になった言っても、過言ではないのに。