「はい、すぐ持ってきます!」
俺が包帯と消毒とガーゼを持ってくると、鈴香さんはすぐに紫月さんの手当をした。
「店長、静かにしてて下さいね。あんまり騒ぐと近所迷惑なので」
鈴香さんが部屋にあったテイッシュに消毒をつけて、それを紫月さんの足にあてがう。
あまりの痛みに紫月さんは眉間に皺を寄せた。
「ふふ。痛がっている姿も最高に可愛いです」
「はあ? お前何言ってんだよ!」
耳を真っ赤にして、紫月さんは明後日の方向を向く。
「あ、ちょっと狼狽えてますね。可愛い」
「あんまり言うとしばく」
紫月さんは鈴香さんにデコピンをした。
「はーい」
「アハハ。なんだかお似合いって感じですね」
紫月さんと鈴香さんを見ながら俺は言う。
仲睦まじそうな紫月さんと鈴香さんを見ているとつい笑みが溢れた。
俺の父さんと母さんもこのくらい仲が良かったんだろうか。父さんと母さんが話しているところ見てみたかったな。
いつか見られるようになるのかな。
虐待の問題が解決して、家族四人で仲良く暮らせるようになったら。そんな日こない気しかしないけど。
「蓮、やっと笑ったな」
紫月さんが笑う。
「えっ」
「蓮、俺のところに来てから全然笑ってなくて、それどころか俺に謝ってばかりだったから、不安だったんだよ。俺と来たのを後悔しているんじゃないかと思ってた」
「そ、そんなことないです」
ひどい誤解を抱かせていたのが申し訳なくて、俺は慌てて首を振った。
「ああ。今の態度で分かった。よかったよ、お前が俺達を見て笑えるくらい元気で」
そう言って、紫月さんは俺の頭を撫でる。
「私も蓮くんが元気でよかった」
鈴香さんが口元をほころばせる。
『蓮夜!』
鈴香さんの顔が、昔の優しかった時の姉ちゃんに似ている気がした。
「鈴香さんって、歳いくつですか」
「え? 私は二十二だけど? 急にどうしたの?」
「俺の姉ちゃんの二個上なんですね」
残酷という言葉があまりに似合う俺の姉ちゃんと、優しくて紫月さんからも信頼されている鈴香さん。
歳が二個しか違わないのにあんなに性格が違うのは環境や境遇のせいなんだろうか。
鈴香さんが俺の姉だったらよかったのに。姉ちゃんを変えたのは俺だとわかっていても、そう考えずにはいられなかった。
「え、嘘だろ? あいつ二十なのか? それであんな考えしかできないなんて終わってるな」
姉ちゃんを終わってるなんて言葉で表現して欲しくなかったけれど、何も言い返せなかった。
姉ちゃんがひどい奴なのは事実だし。俺はそれを身をもって知っている。



