僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい


「大丈夫だよ、お前のことは俺が守るから」
「すみません。俺、紫月さんに迷惑かけてばっかりで」
「迷惑なんかじゃねぇよ。俺がやりたくてやってんだから。同居の許可はどうする? いつとりに行きたい?」
「それは……」
 俺は顔を伏せた。

 親の許可をとらないと、まずいことになる。
 このままだと下手すれば紫月さんが警察に捕まることだってある。

 それでも俺はあんな醜態を親に話す気になんてなれない。言えるわけがない、姉に服を脱がされてクローゼットに閉じ込められたなんて。

 別に犯された訳じゃない。ただ服を脱がされて暴力を振るわれただけだ。でもそれは、いとも簡単に俺の心を傷つけた。目に見えない傷を俺に作った。その傷はどんなに引っ掻いてもなくならなくて、それどころか何もしなくても日に日に悪化して大きくなって俺の心を締め付ける。こんな風に考えてしまうのは傍から見れば大袈裟なのかもしれない。それでも俺はこんな風にしか考えられない。
 きっと親に話せるようになんて一生なれない。今までされた虐待のこともちゃんと話せてないのに、言える訳がない。

「俺が蓮の親に、あの動画見せながら助けた時の状況とか話してやろうか?」
 どうしよう。 
 紫月さんの好意は正直言ってかなりありがたい。でも、親にくらい自分で話せるようにならないとなんだよな。一生話せる気がしないけど。
「いえ、俺が話します。でも、話すのもう少し後でもいいですか。心の準備ができてからにしたいので」
「分かった。でもあんま長くは待てねぇぞ。限界まで伸ばしてもせいぜい一ヶ月が限度だな。もたもたしてると、お前の姉が俺を警察に通報する可能性だってあるからな」
「……はい、分かってます」
 俺は下を向いて頷いた。
「大丈夫だよ。きっと話せるようになる」
「はい」
 俺はぎゅっと拳を握りしめた。
 俺は泣き虫毛虫で、情けない。それでも、前に進みたい。強くなりたい。でないと、いつまでも姉ちゃんに舐められたままだから。