「はい、蓮」
「ありがとうございます。紫月さん、自分の分は買わなくてよかったんですか?」
紫月さんは焼きそばパンとクーのリンゴのゼリー飲料を俺に手渡すと、運転手席に座って、靴下を履いた。
「あー俺、蓮を助けに行く途中に車の中で食べたから」
「そうなんですか」
一緒に食べたかったな。虐待をされるようになってから独りで食べてばかりだし。
「ああ。何、一緒に飯食いたかった?」
「そんなこと言ってないです」
落ち込んでいるのを悟られたくなくて俺は慌てて否定した。
「はいはい」
肩を落として紫月さんは笑う。
俺は何も言わず、紫月さんから目を背けた。
俺がご飯を食べ終わると、紫月さんは薬局から車で二分くらいのとこにあった公園の前で車を停めてそこのトイレで怪我の手当てをしようと言ってくれた。
トイレは入り口のそばに手洗い場と小便器が二つあって、隅に個室が一つだけあった。
紫月さんはトイレの中に入ると、個室のところにあったトイレットペーパーを多めにちぎり、それを手洗い場の水で濡らした。
そして濡れたそれを、俺の骨折した指にあてがった。
「いっ!!」
俺の悲鳴が響き渡った。
公園のかなり端の方にいるのに、悲鳴がすごく響いた気がした。そんなことを考えてしまうくらい猛烈に痛い。
「痛いよな。あとちょっとだけ我慢しろ、すぐ終わるから」
俺は痛みに喘ぎながら頷いた。
「うっ!」
濡れたトイレットペーパーを当てられるたびに、とんでもない痛みに襲われる。
直接水を当てるとさらに痛みがひどくなるからトイレットペーパーを当てられているのだろうけど、それでもかなり痛い。
指に当てるのをやっとやめてくれたと思ったら、今度は腕に巻いてある破れかけの包帯をとられて、そこに水で濡れたトイレットペーパーをあてられた。
腕に容赦のない痛みが襲ってくる。
「はあ……」
本当にめちゃくちゃ痛い。
「俺、枝探してくるわ。何か良い感じのあると良いんだけど……」
紫月さんは肩で息をしている俺を一瞥してから、骨折した指を固定するのに使う枝を探しに行った。
紫月さんはすぐに戻ってきて、手に持っていた枝を水で洗った。
洗ったそれと俺の指を包帯で固定して、紫月さんは満足げに笑う。
「これでよし」
「ありがとうございます、次は紫月さんの手当ですね」
俺の腕に包帯を巻いてくれている紫月さんを見ながら言う。
「あー俺のは家でやるからいい。キズパッドとか買ってきてないし」
「なんで買ってきてないんですか」
「家に余ってるのあるし、どうせ二枚しか使わないのにわざわざ新しいのを買うのはどうかと思ったから」
「……そうですか」
「大丈夫。これ以上トイレットペーパーを使うのは気が引けるし、それにあんまり車を長い間無断駐車しているわけにはいかないからな」
「でも」
「クク。そんなに心配するなよ、蓮。俺の怪我は蓮と比べたら全然大したことないから」
俺を宥めるみたいに紫月さんは言う。俺が小さな声で頷いたのを見ると、紫月さんは公園の出入り口にある車の方に向かった。
「蓮、早く来い」
紫月さんが俺を手招きする。
「はい!」
俺は笑って、紫月さんのそばに行った。
「ありがとうございます。紫月さん、自分の分は買わなくてよかったんですか?」
紫月さんは焼きそばパンとクーのリンゴのゼリー飲料を俺に手渡すと、運転手席に座って、靴下を履いた。
「あー俺、蓮を助けに行く途中に車の中で食べたから」
「そうなんですか」
一緒に食べたかったな。虐待をされるようになってから独りで食べてばかりだし。
「ああ。何、一緒に飯食いたかった?」
「そんなこと言ってないです」
落ち込んでいるのを悟られたくなくて俺は慌てて否定した。
「はいはい」
肩を落として紫月さんは笑う。
俺は何も言わず、紫月さんから目を背けた。
俺がご飯を食べ終わると、紫月さんは薬局から車で二分くらいのとこにあった公園の前で車を停めてそこのトイレで怪我の手当てをしようと言ってくれた。
トイレは入り口のそばに手洗い場と小便器が二つあって、隅に個室が一つだけあった。
紫月さんはトイレの中に入ると、個室のところにあったトイレットペーパーを多めにちぎり、それを手洗い場の水で濡らした。
そして濡れたそれを、俺の骨折した指にあてがった。
「いっ!!」
俺の悲鳴が響き渡った。
公園のかなり端の方にいるのに、悲鳴がすごく響いた気がした。そんなことを考えてしまうくらい猛烈に痛い。
「痛いよな。あとちょっとだけ我慢しろ、すぐ終わるから」
俺は痛みに喘ぎながら頷いた。
「うっ!」
濡れたトイレットペーパーを当てられるたびに、とんでもない痛みに襲われる。
直接水を当てるとさらに痛みがひどくなるからトイレットペーパーを当てられているのだろうけど、それでもかなり痛い。
指に当てるのをやっとやめてくれたと思ったら、今度は腕に巻いてある破れかけの包帯をとられて、そこに水で濡れたトイレットペーパーをあてられた。
腕に容赦のない痛みが襲ってくる。
「はあ……」
本当にめちゃくちゃ痛い。
「俺、枝探してくるわ。何か良い感じのあると良いんだけど……」
紫月さんは肩で息をしている俺を一瞥してから、骨折した指を固定するのに使う枝を探しに行った。
紫月さんはすぐに戻ってきて、手に持っていた枝を水で洗った。
洗ったそれと俺の指を包帯で固定して、紫月さんは満足げに笑う。
「これでよし」
「ありがとうございます、次は紫月さんの手当ですね」
俺の腕に包帯を巻いてくれている紫月さんを見ながら言う。
「あー俺のは家でやるからいい。キズパッドとか買ってきてないし」
「なんで買ってきてないんですか」
「家に余ってるのあるし、どうせ二枚しか使わないのにわざわざ新しいのを買うのはどうかと思ったから」
「……そうですか」
「大丈夫。これ以上トイレットペーパーを使うのは気が引けるし、それにあんまり車を長い間無断駐車しているわけにはいかないからな」
「でも」
「クク。そんなに心配するなよ、蓮。俺の怪我は蓮と比べたら全然大したことないから」
俺を宥めるみたいに紫月さんは言う。俺が小さな声で頷いたのを見ると、紫月さんは公園の出入り口にある車の方に向かった。
「蓮、早く来い」
紫月さんが俺を手招きする。
「はい!」
俺は笑って、紫月さんのそばに行った。



