紫月さんは俺の家から車で五分くらいのところにある薬局の駐輪場に車を停めた。

「蓮、降りるか?」
 紫月さんが首を傾げて聞いてくる。
「降りなくていいです。姉ちゃんが追ってきていたらマズいですし、それに、他人に怪我見られるのはちょっと……」
「じゃあ何食いたい? 俺買ってくる。つっても、薬局じゃカップラーメンかパンかおにぎりくらいしかないけど」
「……焼きそばパンで、お願いします。あと、クーのゼリー飲料飲みたいです」
「あー、りんごとかグレープとかあるやつか! 何、お前それ好きなの?」
「いや別にそういう訳じゃないです。ただ、それだったら片手だけでも飲めるかなと思って」

「あー確かにそうだな。でも、なんでクーなんだ? ゼリー飲料なんて他にいくらでもあるのに。蓮、もしかしてお前、意外と可愛いもの好きなのか?」

 紫月さんが口を大きく開けて笑いながら言う。

「なっ、ちっ、違います! フルーツが好きなだけです!」
「ふーん? 味は何がいいんだ?」
 紫月さんがにやにやとした顔で言う。
 絶対可愛いものが好きだと思われている。そんなことないのに。
「りんごでお願いします。ほっ、本当にフルーツが好きなだけですからね? 誤解しないでください!」
「クッ。了解。じゃ、ちょっと行ってくる」
 そう言うと、紫月さんは車を降りて薬局に行った。
 車に戻ってきた紫月さんは俺が頼んだものの他に、包帯と靴下を手に持っていた。