僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい


「見え透いた嘘つくなよ! 本当は辛くて仕方がないくせに!」
 紫月さんは俺の心のうちを容易く見破った。
「紫月さん、俺は……」
「お前はどうする? 俺と暮らすか? お前のことを弟だと思っている奴と」
 俺は唇を噛んだ。
 なんて答えればいいのか全然わからない。
 紫月さんと暮らせば、虐待からは解放されるだろう。
 でも、弟だと思われているのを承知の上で同居して、果たして、楽しい未来は訪れるのか? 
 きっと、そんな未来は訪れない。 

「フッ、答えられないか。ごめんな。助ける資格もないのに、助けて」

「えっ」

「本当はわかってたんだ。赤の他人のお前を弟だと思っている時点で、俺に助ける資格がないことくらい。――俺は自分の心を満たすためにお前を利用したクソ野郎だよ」
「……それでも俺は、紫月さんに助けられてよかったです。俺は紫月さんに助けてもらえてなかったら、きっと死んでいました」
「それはそうかもな。あんなところにずっと閉じ込められていたら、そのうち餓死するもんな」
「……はい」
 浮かない声を出して頷く。
 俺は紫月さんに助けられてなかったら、本当に餓死していただろう。実の姉のせいでそこまで追い込まれたなんて、とても考えたくないけれど。

「蓮、腹減ってるか?」
 紫月さんは急に話題を変えた。
 俺が一緒に暮らすかを答えられなかったから、そうしたのかもしれない。気を遣われてしまった。
「はい。正直言うと、かなり減ってます」
「じゃ、ここを問題なく歩けるくらいまで床を拭いたら、怪我の手当をして飯にするか」
「……はい」
 俺は消え入りそうな声で頷いた。