僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい


「義勇さんピザ、頼みましょうよ!」
 俺の右隣にいる英輔がそんなことを言ってくる。

「はあ。言われなくてもそのつもりだ。たっく、大人になっても遠慮がないのは相変わらずだな。飾音、ピザは食えるか?」
「はい、大丈夫です」 
「ならよかった。鈴香、メニュー取ってきて」
 自分の目の前にいる鈴香さんに、お義父さんは声をかけた。

 メニュー? ピザ屋のチラシのことだろうか。今どきメニューなんてスマホでも見られるのに、何でチラシなんだ? もしかして、姉ちゃんがいるからだろうか。

「うん、取ってくるね!」

 そう言うと、鈴香さんはすぐにピザ屋のチラシを持ってきて、それを姉ちゃんに渡した。姉ちゃんは鈴香さんに礼を言ってから、母さんと一緒にメニューを見た。やっぱり姉ちゃん用だったのか。麻痺があるのは片手だけだから、姉ちゃんはスマフォを不自由なく操作できる。でもスマフォを見ながら飲み物を飲むのは無理だから、チラシのほうがいいよな。

「ありがとう、お義母さん」
「ううん。気にしないで」
 俺が礼を言うと、鈴香さんは笑って首を振った。
 六人でピザを食べていたらあっという間に十七時半前になった。

「お母さん、まだお酒飲んでないですよね?」
 ピザの入っていた箱を畳みながら、お義父さんは母さんに尋ねた。
「はい」
「そしたらお母さんにも、運転頼んでいいですか? 俺のセダン、乗れるのは頑張っても五人が限界なので」

「はい、大丈夫です。えっと、蓮夜は紫月さんと同じ車にする?」
「うん。英輔も、お義父さんの車でいい?」
 テーブルやソファに置かれている五つの皿を重ねてから、俺は英輔を見た。
「もちろん」

「飾音はどうするんだ? 乗るのは俺のでもお母さんのでもいいけど」
「えっと……」
 姉ちゃんと目が合った。多分姉ちゃんが俺と一緒に乗ろうと考えていたから、目が合ったのだと思う。

「あ、姉ちゃん、こっちくる?」
 心の中で深呼吸をしてから、俺は聞いた。
「いい? それでも」
「うん、いいよ」
「ありがとう、蓮夜」
 姉ちゃんは頬を赤らめて、嬉しそうに笑った。はあ。よかった。対応、正しかった。
「そしたら鈴香さんは、私と一緒に行きましょうか」
「はい、お願いします!」
 車に誰か乗るかが決まったところで、俺達は大急ぎで片付けを終えた。