僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい



 今日は、大地さんのライブに母さんとお義父さんと鈴香さんと英輔と俺の五人で行くことになっている。ライブは舞踏館で、十九時からやるらしい。舞踏館までは、ここから車で一時間半くらいはかかるらしい。今は十六時半過ぎなので、英輔が後十分で来るなら、多分遅刻せずに会場には着くと思う。

 武道館でのライブなんて滅多にないから、大地さんが気を利かせて五人とも招待してくれて、ライブには行けることになった。ライブ会場には、姉ちゃんも来るらしい。姉ちゃんは一ヶ月くらい前に釈放されて、今では紫月さんが前に住んでいたマンションの一室で、一人暮らしをしている。まあ母さんが三日に一回は様子を見に行っているから、それを一人暮らしって言えるのかは謎だけれど。

「それにしても大地さんも、気が利きすぎだよな。俺達はまだしも、英輔と飾音までライブに招待するなんて」
 確かに。
 チケットは一枚七千円ほどだから、六人分だと四万円だ。それなのに招待してくれたなんて、、本当に太っ腹にも程があるよな。出演者だから、大地さんがお金を払ったわけではないのかもしれないけど、それにしたって気が利きすぎだ。

「本当だよね」
「蓮夜、今度大地さんと飯行こうな。三人で。その時にお礼言おう」
「うん!」

 俺を見て笑ってから、お義父さんが俺の鞄の中身を見る。多分お弁当箱を探しているのだと思う。

「お義父さん、俺取るよ。お弁当箱でしょ?」
「それもそうだけど、蓮夜の絵が見たい」
 そう言いながら、お義父さんは鞄の中から、スケッチブックを取り出した。
「え、これ大地さんじゃん!」
 スケッチブックの一番後ろのページに描かれている絵を見ながら、お義父さんは叫んだ。

「武道館ライブの宣伝ポスター、家にあったでしょ? それ見て描いた」
「へー。空き時間に?」
「うん。授業の間の空き時間に」

 授業で大地さんの絵を描いたら、同じ学科にいる同級生に大地さんのことを聞かれる可能性があるから、空き時間にしか描けないんだよな。俺が嘘をつくのが上手かったら、大地さんのことを聞かれても父親の親戚だって言わない自信があったのだと思うけど、あいにく俺はそんなじゃないから、授業で描くことはできない。