僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい


「ただいまー!」
 家のドアを開けて、俺は言った。
「「お帰り、蓮夜」」
「お帰り、蓮夜くん」
 お義父さんと鈴香さんと母さんが、玄関で俺を出迎えてくれた。
「うん、ただいま」
 三人を見ながら、俺はもう一度声を上げた。

 俺が虐待から解放されてから、六年の月日が流れた。俺は今、紫月さんの部屋があったあのマンションではなく、自分の家で、紫月さんと鈴香さんと母さんと暮らしている。あのマンションの部屋は二人で暮らすには十分な広さだけれど、四人で暮らすにはちょっと狭いので、家で暮らすことになった。

 俺は今、都内にある国公立の美大に通っていて、英輔は、私立大学の体育学科に通っている。英輔はどうやら、体育の先生になりたいらしい。高校を卒業してからも英輔との交流はずっと続いていて、今では英輔は、俺にとってかけがえのない親友になっている。

「まだ五時前にもなってないし、ライブには余裕で間に合いそうだな」
 お義父さんが、俺の肩にあった鞄を手にとりながら言う。

「ありがとう。うん! 英輔ももうすぐくるみたいだから、大丈夫だと思う」
「あいつ、あと何分くらいでこっちくるんだ?」

 リビングに向かって足を進めながら、お義父さんは言う。

「んー、あと十分みたい」
 お義父さんの隣を歩きながら俺は言った。
「そうか。それなら心配ないな」
「うん」
 俺はそのまま三人と談笑をしながら、リビングに行った。