僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい


「よかったら蓮夜や紫月さんも、一緒に行きませんか?」

「え」

 姉ちゃんと一緒に出かけるのか?

「蓮夜はもう、飾音には会いたくない?」

「そ、そんなことないよ!」

 慌てて首を振る。別に決して会いたくないわけじゃない。ただ、会った時にどう振る舞えばいいか分からないだけで。

「蓮夜、別に会った時に無理に話をしようとする必要は無いから。いつも通り、俺と話をしてたらいいから。それで大丈夫ですよね?」

「はい。気を遣っていただいてありがとうございます。本当に紫月さんには、何度お礼を言ったらいいのか。いつも本当にご迷惑をおかけしてすみません」

「いえ。俺はただ蓮夜が笑って生きていける未来を作りたくて、やっているだけなので」

「それなら余計お礼を言わせてください。蓮夜のことをそんなに大切にしてくれて、本当にありがとうございます」

 母さんは背筋をピンと立ててから、ゆっくりと頭を下げた。

「ありがとう、お義父さん」
 母さんに続いて、俺は礼を言った。

 紫月さんの顔が、りんごみたいに赤くなっていく。

「べ、別に」
 顔を隠して、紫月さんは俺と母さんから目を逸らした。どうやら照れているみたいだ。

「あの、紫月さんはどうしてそんなに、蓮夜に優しくしてくれるんですか?」

「……いい子だからです、蓮夜が。蓮夜は素直で、繊細で傷つきやすくて、危なっかしい。それが蓮夜の魅力で、長所だと俺は思っています。それを短所だって言う人も、中にはいるんだと思います。でも少なくとも俺は、そう思わないです。俺は、蓮夜がそういう子なのを凄く魅力的に思っていますし、そういう子だからこそ、蓮夜を一生支えたいと思っています」

「一生ですか?」

「はい。……お母さん、蓮夜くんを、俺にくれませんか」
 ソファから降りると、紫月さんは膝をついて、床に髪の毛がつくくらい頭を下げた。
 婚約者の父親にでも言うかのような言葉だ。

「くれませんか?」
「蓮夜を俺の養子にしたいんです」

 頭を上げてから、紫月さんはしっかりと母さんを見つめた。
 母さんは悲しそうに、目尻を下げた。やっぱり落ち込むよな。

「もしかして、特別養子縁組ですか?」
「はい」
「紫月さんは独身ですよね?」
「はい。ただ先日、婚約者ができまして。まだ式の段取りも決めていないので、決して今すぐに蓮夜を養子に迎えようとしているわけではありません。ですが、考えておいていただけませんか」

「蓮夜は紫月さんと暮らしたいの?」
 母さんが俺を見つめた。

「う、うん。ごめんなさい。」
 紫月さんを選んだことに後ろめたさを感じて、下を向いて謝ってしまった。

 紫月さんがソファの上に座り直して、俺の隣に来る。

「蓮夜、誰も謝れなんて言ってないからな」
「そ、そうだけど……母さん、落ち込んでる」
「そうね。悲しくないとは言えないかな」
 俺の頬に手を当てながら、母さんは作り笑いをした。