僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい


「ありがとうございます。お言葉に甘えて、上がらせていただきます」

 紫月さんが頭を下げて、家の中に入って行く。俺は紫月さんの後を追って家の中に入ると、靴を脱いで、端に置いた。紫月さんは靴を脱ぐと、それを俺のやつの隣に置いた。

 紫月さんと俺をリビングまで案内すると、母さんはキッチンに行った。多分、飲み物を用意しに行ってくれたのだと思う。案内といっても、俺はついこの前までここに暮らしていたから、俺と紫月さんじゃなくて、紫月さんを案内した感じだろうけど。

 紫月さんと一緒にソファに座っていたら、母さんがお盆を持って戻ってきた。お盆には、コップが三つ置かれていた。それぞれのコップには、紅茶とコーヒーとお茶が入っていた。


「はい、蓮夜」
 お盆を床に置いてから、母さんは俺に紅茶の入ったコップを渡した。
「ありがとう、母さん」
「りんごの匂いがしないか?」
 俺の手元にあるコップを見ながら、紫月さんは首を傾げる。
「そうです、りんごの紅茶です。よく分かりましたね」
「蓮夜と暮らすようになってから、毎日のように紅茶の匂いを嗅いでいるので」
 確かに。紫月さんの家はティーバッグが大量にあるから、俺は起きると、いつも朝一番に紅茶を飲んじゃうんだよな。あのティーバッグは弟さんのために買った物のハズなのに、紫月さんは俺が飲むのを全然止めないから、ついつい飲んじゃうんだよな。


「ふふ、そうなんですね。紫月さんはコーヒーで大丈夫ですか?」
「はい、ありがとうございます。いただきます」
 紫月さんは笑いながら、母さんからコーヒーの入ったコップを受け取った。