僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい


「赦さなくていいの?」
 自分は良くない考えをしているのではという思いが頭の中にあって、ついそんなことを聞いてしまった。
 俺にはわからない。誰を赦すのが最善で、誰を赦さないのが最善なのか。自分が赦したくないから赦さないでいいのか、それではダメなのかどうかも俺にはわからない。

「赦さなくていい。蓮夜、頼むから自分がより幸せになることだけ考えてくれ。俺はお前がそうしてくれたら、お前の人生がお前の望み通りになるよう、最大限努力するから」

 紫月さんが俺の両肩を、力を込めて掴んだ。
 胸が締め付けられた。心臓を暖かくて、俺より一回り大きい紫月さんの手で、優しく抱きしめられたような気がした。
 

 テストの三週間前から毎日勉強をしたことを、最大限勉強したと表現する人もいれば、テストの三ヶ月前から毎日勉強をしたことを最大限勉強したと言う人もいる。何をもって最大限努力したことにするかは、人によって違う。それでも俺は、紫月さんの言葉を聞いて、少しも不安だと思わなかった。紫月さんは俺のために母さんや拓人さんに思いっきり怒ってくれたし、姉ちゃんの説得だってしてくれた。それに俺を、養子にするとも言ってくれた。もうすでに、紫月さんは俺が幸せになるために、たくさんのことをしてくれている。それなのにまだ、最大限の努力はしてないと言うなんて、一体どれだけ良い親なんだ。


 最大限に達するまでの基準があまりに大き過ぎる。


「何でお義父さんは、そんな風に言ってくれるの?」

「お前が俺の家族だからだよ」

 姉ちゃんは家族なのに、優しくしてくれなかった。紫月さんは、そうじゃないんだ。家族だから、優しくしてくれるんだ。

 ただでさえ泣いていたのに、そんな風に思ったら余計泣けてしまった。

 紫月さんは俺が泣き止むまで、背中を撫でてくれた。