あれ?
もしかして紫月さんは、姉ちゃんが俺の夢を応援していることも、俺を嫌ってないことも、面会室に来る前から気づいていたのだろうか。気づいていたから、あんなに姉ちゃんを責めたのだろうか。でももしそうなら、どうして、俺に絵を描くように言ったのだろう?
俺が絵を描かなくたって、さっきみたいに質問をすれば、姉ちゃんの化けの皮が剥がせたのに。
「紫月さん」
警察が紫月さんに声をかけた。もしかして、面会時間の終わりが近いのだろうか。胸に顔を埋めていたから、名前を呼んだのは聞き取れたけど、紫月さんと警察が何を話しているのかはわからなかった。
「蓮夜、帰ろう」
背中を撫でられて、耳元で囁かれる。やっぱり時間の話をしていたのか。紫月さんの言葉に頷くと、俺はすぐに紫月さんの胸から離れた。
「飾音、これは俺達が持って帰るからな」
パイプ椅子の上に置かれていたキャンバスを手に取って、紫月さんは言った。
「はい」
「帰るぞ、蓮夜」
「う、うん。ば、バイバイ姉ちゃん」
「ええ、またね」
キャンバスを持っていない方の手で俺の手を掴んで、紫月さんは面会室を出た。
手を離したくなかったから、俺は紫月さんと手を繋いだままの状態で、駐輪場に向かうことにした。
「お義父さん」
「ん?」
「ずっと、姉ちゃんが俺を嫌ってないと思っていたの?」
「いや、嫌ってないとは、ずっと確信できてなかった。ただずっと、引っかかってはいた。あのクソ姉はいつも、蓮夜にトドメをさそうとしないから」
「死ねばいいって言ったことは、トドメを指したことにはならないの?」
俺はそう言われたせいで、すごく傷ついたのに。
「ああ。だって、『死ねばいい』より、『今すぐにでも死んで欲しい』って言われた方が怖いだろ?」
「うん」
確かにそっちの方が怖い。俺は素早く頭を振って頷いた。



