僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい


 紫月さんと姉ちゃんの話し声が少しでも小さくなるのを期待して、俺は紫月さんの後ろに隠れた。

「飾音、何で蓮夜に身体を売らせなかった?」
「身売りをしたせいでキスマークや噛み跡が蓮夜の身体についているのをお母さんが見たら、大変なことになるじゃない」
「確かにそうなったら大変だな。でもそれなら、買春をすればよかったんじゃないか? 金をもらったのに跡をつける奴なんてそうそういないだろ」

 買春って、身体を売っている人を買うことだっけ?

 身体を売っている人に犯されていたらと思うと、心臓の鼓動が速くなって、身体が震えて、全身から汗が流れた。

 止めたらダメだ。
 でも、これ以上はとても聞いていられない。

「やめて」
 紫月さんの服の裾を掴んで、俺は首を振った。

「蓮夜、今ここで話を止めたら、お前は一生、『姉に嫌われている』と思い込むハメになるぞ?」
 それはダメだ。

「止めてごめん。話、続けて」
 俺がそう言うと、姉ちゃんはすぐに口を開いた。

「売春をしているなら絶対に跡をつけないとは、言えないでしょ」
「それならお前が、行為をしているところを監視しておけばいいんじゃないのか?」

「弟が喘いでいる姿なんて見ても楽しくないでしょ」

「ああ、楽しくはないだろうな。でもお前は、楽しいから虐待をしているわけじゃないだろ。蓮夜に地獄を味合わせるためにしているんだろう。それなのに、行為を見るのが楽しくないと思ったから、身体を売らせなかったのか?」
 
 姉ちゃんはまた、返事をしなかった。