「えっ」
姉ちゃんが、俺を応援しているだって? そんなことあり得るのか?
「応援なんてしてないわよ」
「じゃあどうして、お前は今、キャンバスを捨てるなって言った? ただの気まぐれか? 違うよな。気まぐれで捨てるか捨てないかを決めるなら、蓮夜の部屋にあったキャンバスは、少なくとも一枚は捨てられているハズだよな」
そうなのだろうか。
「お、お義父さん、俺、確かにキャンバスは捨てられたことないけど、スケッチブックは破かれたよ?」
「それは俺も覚えてる。……蓮夜、スケッチブックとキャンバスの違いって、何だと思う?」
「えっと……材質と、大きさが違うと思う」
表面上の違いは、多分そこら辺だ。
「それで合ってる。じゃあ次の質問。蓮夜、スケッチブックに絵を描くのと、キャンバスに絵を描くのって、どっちの方が大変だ?」
「キャンバス」
何でそんな紫月さんでも分かるようなことを聞くんだ?
「そうだろ。キャンバスの方が大変だよな。それならスケッチブックより、キャンバスの方が捨てられたり壊されたりするのは辛いよな」
「うん」
迷いなく頷く。スケッチブックにシャーペンや鉛筆で絵を描くだけなら、授業の合間の十分休みにもできる。でも、キャンバスは下書きをするのに一時間以上かかることだってあるし、キャンバスに描いたものの方が壊されたり捨てられたりするのが辛いに決まっている。
「はあ。行動が可笑しいんだよ。嫌いだと言っているのに名前を呼んだり、俺が絵を捨てようとしたら止めたりして。蓮夜のことが嫌いならしそうもないことばかり、お前はしている」
「え。俺を疫病神って言わないのは多分、ここが刑務所で、それを言ったら、さらに罪が重くなる可能性があるからじゃないの?」
きっと名前で呼んだことには、それぐらいの意味しかない。
「呼ばない理由だけがわかってないなら、確かにそう考えていいと思う。でもそうじゃないだろ。絵を捨てるかどうかなんて、こいつが絵を描いたわけでもないんだから、本来は気にする必要なんてない。それなのに止めたことが問題なんだよ」
確かにそうだ。絵のことは、姉ちゃんには関係ないことだ。



